# 【signal】は誰の部屋なのか
この記事は2022年4月1日よりアイドルマスターシャイニーカラーズで開催されたシナリオイベント『Your/My Love Letter』のネタバレを含みます
# Your/My Love Letterについて
感光注意報から続く初期4ユニットのこれまでの総決算的な話と、はこぶものたちから顕著になり始めたモブ着目シナリオが悪魔合体核爆発という感じのオモロシナリオだった 言ってしまえば「人はみな自分の人生の主役♪」を表現できる限界まで嫌味なく、多くの人に誤解なく刺さるように丁寧に作られたシナリオということになるのだろうけど、これまでのシナリオでアルストロメリアの3人が出会った困難をなるべく普遍的に刺さるように再構築してモブにばらまきつつ、アルストロメリア側にもこれまでのそれを踏まえて今どうあるべきか、どうしていきたいかを「登場人物の一人として」書いていくことでシナリオの主軸がモブたちであることを崩すこと無くアルストのシナリオイベントとして成立させるのがすごい面白かった 一番好きなシーンはWebディレクターが仕事の回りが悪く風邪とあいまって家事のほうが限界になって在庫枯らしまくってるのと千雪が(こっちはこっちでクソ忙しいのは事実だと思うんだけど)忙しさにかまけて買い物怠った結果二人して歯磨き粉切らしてるリンクが芸細で好きだった
# シャニマスとモブ
モブ、と言ってしまうと少し風情が無いが、彼らを表現するのにこれ以上分かりやすい単語も無いので一旦使わせてもらうことにする。 はこぶものたちで描かれた、こちらから関与できない、あるいは感知出来ない存在にも各々の事情があり、彼らの人生に自分たちは十割関与できるわけではないとしながらも、ある種の諦念とともに出来る範囲で彼らが幸せであってくれればいいな、というなんともむずがゆい、それでいて一つの最善にも見える着地点からはじまり、アフター・スクール・タイムにおいては「アイドルという存在ではない」彼女らをベースに、それでも互いを想い合えるならば良い結末にたどり着くことが出来る、と(放課後クライマックスガールズの全力の力添えがあったとは言え)アイドルではない彼女たちがイルミネが手を伸ばせなかった人たちを救済するという、能力や立場ではなく個々人それぞれにしかない繋がりの強さを描くことを経て、このYour/My Love Letterである。
この話の中においてはアルストロメリアの3人すら(要所要所では確実に主役ではあったが)各話に登場するネームドモブたちの存在感を食わないように過度な物語性の強い事件に遭遇することを避け、まるでアイドルたちとモブに何の違いも無いかのような空気感が十分に生み出された後、アルストロメリアのそれぞれの決心によって作り出される、「名前を教えて」の輪。名前を持たなかったはずの彼らがアイドルと並び立つだけの情報量を纏うことを許されて、互いに双方向の想いを伝え合えるようになる、美しい終わり方。アルストロメリア、彼女らは手の届かないほどの特別な存在ではなく、ただ想いの架け橋になれるだけの、大きな枠組みの中に生きるひとりの人間。アンカーボルトソングの中でもあった、自分を愛することが出来る自分を確立するためのまた次の一歩だった。
しかし、アイドルマスターシャイニーカラーズにおいては、それは多分生き方としては正しくてもアイドルとしては反則行為で、「君の好きなことしたいことまるごと知りたいよ教えてね」は約3年前にイルミネーションスターズがとっくに歌ってきたのである。それでも、イルミネの子たちはそれをアイドルとしてしか発信しておらず、はこぶものたちにおいても、想いを伝えきれなかったスタジアムの人たちに対しては、直接のメッセージではなく、また別の行動によってその心を示していた。きっとこれがシャニマスにおけるアイドル像であり、イルミネーションスターズが星である所以なのだと思う。それでも、薄桃色から続くアルストロメリア3人がそれぞれがそれぞれであるための、人間としてのひとつの軸の確立ということにおいて、この話はとても鮮やかなものだったと思う。
# で、このイラストは誰の部屋?
本題に入る。
上記画像はこのイベントの報酬カードイラストである。このイラストには、アルストロメリア3人の誰の部屋でもない、何かの部屋が描かれている。- 今回登場したネームドモブたち誰かの部屋
- 特に誰というわけではないが、今回登場したネームドモブのような人たちがいる部屋としての概念の集合体
- シャニPの部屋
- Unknownの部屋
あたりが候補としては考えられると思うが、部屋の様子を見ると
- どちらかといえば全体的に男性的な色合い、レイアウト
- 光回線のモデムがある(=集合住宅ではないか、集合住宅ならわざわざ個別工事をしている=結構なオタク)
- 部屋がどう見ても8畳以上ある上に荷物が少なく、経済的余裕を感じさせる(≒ちょっとお高いマンションか一軒家)
などが見受けられる。これらの条件を勘案すると、イベントシナリオ中に登場したネームドモブにこれらの条件を全て満たしそうな人物はおらず、誰か固有の人物を挙げることは少々難しい。また、シャニPの部屋というのも少し願望がすぎるというか、ここまでパーソナリティを隠すのに(明言していないとはいえ)部屋だけがわかっているというのも考えづらいのでこれも一旦否定する。そのため、「Unknownの部屋」説について一度考える。
# Unknown
まず、彼の登場シーンについては特定人物でなく概念的な存在である説、時系列がずれている説なども聞くが、一旦特定人物の同一時間軸のシーンだと考える。
彼(推定)の登場シーンでは背景が真っ暗かつ、彼自身も身を包む辛さにうめき声を上げるだけなので彼本人のパーソナリティも環境もほとんど分からないが、作中で彼が何をしたかというと登場したネームドモブ以上の苦境に立たされているらしいことが示唆され、最後の最後でアルストロメリアが名のある人たちに向けて手を伸ばしたと同時にカーテンを開け、再起を図る場面だった
この期に及んでも彼の表示名は「Unknown」であったため、少なくとも彼の名前はアルストロメリアには伝わっていない 一方で、彼が登場する場面では最後に限らずその前後に必ずアルストロメリアが電波を通して言葉を届けているシーンが挟まれるため、一方的にアルストロメリアのメッセージが伝わっている可能性については十分に考えられる。よって、彼は
- 例え双方向のコミュニケーションが成立してなかったとしても、アルストロメリアが示した誰かを救いたいという姿勢が彼にも届いた
- アルストロメリアは彼を直接救うことは無かったが、アルストロメリアだけじゃなく誰かを救おうとする人はいる、あるいは、人はあるときは自分で自分を救う決断をすることもある(決して弱いだけの存在ではない/アイドルに全てを背負わせるわけじゃない あたりの意味合いを持つ)
のどちらかの意味を持っていたこと思われる。 この場合、前者の「直前のシーンがアルストロメリアだったので最後のUnknownにはアルストロメリアのメッセージが伝わっていた」とするならば、例の部屋のスチルはUnknownの部屋だと考えても良いのだと思うが、かなり長い間精神をやられていたらしい人の部屋にしては整いすぎているという違和感はどうしてもある(復活してからしばらく後の様子ということも考えられるが)
一方、彼が持つ役割が後者の「アルストロメリアと直接の関係はない」とするならば、部屋の中で最も大きな要素であるアルストロメリアの動画を映したスマホが存在する以上これは彼の部屋ではないと考えられる。その場合、彼以上に適役と思われる配置が存在しないので、この部屋は「アルストロメリアファンのネームドモブの概念の集合体」とするしかない。
Unknownの存在はどちらかというと「はこぶものたち」に登場したSNSで好き勝手な憶測を並べ立てるファンに近くて、今回アルストロメリアが打ち出した無理矢理にでも手を伸ばす試みに引っかからなかった人ではあるが、それでも(アルストロメリアが直接関係したのかどうかに関わらず)ある程度自力で自分を救済する兆しを見せたので、この世界の哲学としてははこぶものたちでも見た「結局のところ自分だけで全てをどうにか出来るわけではない」というのを良くも悪くも表しているのだなあと思った。シャニPが「(ファンからのメッセージ)全部に返事をすることは難しくても思いは届く」と言っているように、アルストロメリアはそれらの想いの架け橋としていつか巡り巡ってUnknownのような存在にも届くのだ、と彼女らの役割を肯定する一方で、それの結末がどうあれ、全く別のところで勝手に立ち上がったり動けなくなったりする人がいるというのは残酷なようで、世の中どうにもならないこともあるけれどそんなに捨てたもんじゃないよと、例えばはこぶものたちで少し世を儚んだイルミネであったり、ストーリー・ストーリーなどで社会の事情に巻き込まれがちなアンティーカだったり、様々なかたちで世界の試練に遭遇する彼女たちを支える最後の砦になるのかもしれない。
# おわり
結局私はYour/My Love Letter単品のシナリオとしてはこの部屋の主がUnknownであってほしいが、シャニマスというシナリオを考えた時にUnknownの存在はシャニマスがシャニマスであるための強い思想の一つだとも思うので、そうであるならば別に誰の部屋でもいいや、という決めかねる状況にある。誰か答えを知っていたら教えてほしいです